【ミ○コの謎】
− 迷探偵物語 −
● 連載第三回
(最終回)
「ミチコ」は「巳知子」だ・・・その結論を抱いて、メイ探偵は敬愛する筆者のもとに急いだ。口元には得意さを隠し切れない笑みをたたえていた。 「やあ、よく来たね」 筆者は深夜にも関わらず、快く探偵を迎えてくれた。 「先生、ようやく『ミ○コ』の謎が解けましたっ!」 探偵はそう言うと、挨拶もそこそこに自分の推理を披露し始めた。 彼の話は自慢話が半分以上だから、なかなか前へ進まない。それでも筆者は何も言わずに微笑みながら聞いてくれていたが、話が「巳」の字に掛かった辺りで少し眉根を寄せた。 それにも気付かずに探偵が先を話そうとするのを制し、筆者はこう言った。 「君ねえ、『巳』の字は違うんじゃないかな」 「へ?」 いままで得意満面で喋ってきた探偵は、驚いて問い返した。 「ど・どこがおかしいんですか?」 「うむ。『巳』という漢字は見た目は確かに簡単な字だ。君が疑わなかったのも判らんではないが、君はこの字を小学校で習ったかね?」 「あっ・・」探偵は絶句した。 「『巳』とよく似た字に『己』と『已』がある。君は『己』と勘違いしたんじゃないかね?」 言われてみればその通りである。それどころか、探偵は『巳』も『已』もすべて『己』と同じと思っていたのであった。 その様子を見てとった筆者は、なおもこう言った。 「『己』という字も、字ヅラは簡単だが、小学校で習うのかねえ? 少なくとも低学年で習う漢字とは思わんがねえ」 ますますもってお説の通りである。探偵はついにうつむいてしょげ返ってしまった。 「君ぃ。そんなにがっかりしなくてもいいよ。『巳』の字ではうまくなかったが、ほかでは良く頑張ったじゃないか」 筆者の言葉に探偵は元気を取り戻した。 (そうだ。ミコさんだって謹慎がどうこう言いながら、また復帰しつつあったじゃないか。俺だって・・) ミコさんは Excel Fun−Club で間違った回答をしたときなど、よく落ち込んで『しばらく謹慎します』なーんてメールをよこすのです。 文中で「しつつ」とあるのは、当時 − 2000年7月末 − もそういうことがあったのでしょう。 ちなみにミコさんの "しばらく" は30分が上限らしい・・・さりげなく現実と交錯させる筆者であった。(^^; 「じゃあ先生は『ミ』の字をどう考えてらっしゃるんですか?」 「うむ。それについて、ワシには一つの思いがあるのだよ」 筆者は再び話し始めた。 「『ミ』という音(おん)にこだわると、どうしても文字が限定されてしまう。 ここは漢和辞典的発想から離れてはどうかと思ったんだが」 「とおっしゃいますと?」 「うん。つまりだね。日本では人の名前には当用漢字と人名用漢字とそれからひらがな、かたかな以外は使っちゃいかんことになっておる」 「ふんふん・・」 「ところがだ。漢字の読み方については、なんの制限も無いんだよ」 「えっ! 先生、ホントですか?」 「うん。君は戸籍謄本なんかを見たことがあるかね? そこにはふりがななんぞ付けてないだろうが」 ・・・そうか・・これは盲点であった。 「例えばの話だが、『美顔子』と書いてミチコと読ませたっていいわけなんだな、これが。 だが実際にはそこまで訳の分からんことをしては子供が可愛そうだ。 だから実際には、漢字を訓読みにしたときのアタマの文字を読みに使うということが多いな」 「なあるほど」 「例えば『水無子』と書いてミナコと読むとかだな」 「はああ・・・」 探偵はひたすら感心して聞き入っていたが、本題を思い出して訊ねた。 「で、先生。ミチコの謎は一体?」 「うむ。それはだな」 「はい」探偵はグッと身を乗り出した。 「それは・・・そのう・・・判らんのだ」 「ガクッ! なんですか先生・・」 「まあそう言うな。ワシにはワシなりにこれではないかという候補は一つに絞ってある」 「そ・そうなんですか? で、それは?」 「うむ。(コホン)それはぢゃな・・・」 勿体をつけてから筆者は静かに言った。 「それは耳知子ぢゃ」 |
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(「ミ○コの謎」・・・ 完)
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aaa | 残念ながら答えはブーです。 |
しかも推理の過程で提示した『巳知子』や、結論の『耳知子』にはご不満のようでした。 いわく・・・ |
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あれ?
この探偵さん、私が一番最初に出したヒント、もしかして忘れてるかなって思いました。 >欲張りな親が、こういう子になってほしいとか、いろいろ考えて付けてくれたおかげで、 >普通名前には使わない漢字が使ってあるんですよ。 巳って普通、そうなってほしいってつけるかなぁ? |
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ううむ。名前が当たらなかったばかりか、おもしろくない字だと誤解されてしまうとは。 で、反論。 |
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「巳知子」はあくまでも「耳知子」を提示するための前フリなんです。 実際の推理の過程を言いますと、ミコさんの >欲張りなお親が、こういう子になってほしいとか、 >いろいろ考えて付けてくれたおかげで・・・ というヒントで、普通の「ミ」の字は全部放棄したんです。そしたら「耳知子」がパッとアタマに浮かんで・・。 メイ探偵の推理過程は、話を面白くするためにすべて後からつけ足したことなんです。 ここで「耳知子」がなんで望ましい名前だと考えたかを書いておかないと、ただ単に珍しい字を見つけただけだ、くらいに思うでしょうね。 知識をひけらかすみたいなんで書かずにおいたんですが、解説しておきましょう。 ミコさんは「論語」って知ってますか? 孔子の教えを後に弟子たちがまとめた書物です。その中に・・・ 吾、十有五にして学に志し、三十にして立つ。四十にして惑わず・・・ という有名な一節があります。ここから15歳を「志学」、30歳を「而立」、40歳を「不惑」などと呼ぶようになったわけです。この続きは・・・ 五十にして天命を知り、六十にして耳順ひ(耳したがい、と読む) 七十にして己の欲するところに従がひて矩(のり)を踰(こ)えず です。ですから50歳が「知命」、60歳が「耳順」となるわけですが、「耳知子」はこの50歳と60歳を併せたかたちですね。 お寺の和尚さんなんかに名付け親になってもらったら、こういうのも有り得るかなと思ったわけです。 それから因みに言っておきますが、ヘビとカラスとネズミは、いずれも神または神の使いとして崇められる動物ですから、人によって評価の分かれる動物なんです。 ですから人によっては名前に採り入れる可能性がないとは言いきれません。 「烏(からす)」を名前に使ってるのは私は見たことないですが「巳」は実際に数多くあります。 「巳一郎」とか「一巳」とか「克巳」など。男性が多いかな。 さすがに「鼠」は使いにくそうですね。 昔、清水・子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥太郎という人が実在しました。『しみず・ねうしとらうたつみうまひつじさるとりいぬいたろう』さんじゃあないだろう、『しみず・えとたろう』さんかな?と思ってたんですが、どうやら『しみず・じゅうにしたろう』さんらしいです。 |
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こう反論はしてみたものの、所詮負け犬の遠吠えっぽい体たらく。 で、捲土重来を期して連載を開始したのが「盗まれたミコ」です。 次回をおたのしみに。 |