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【ミ○コの謎】 − 迷探偵物語 −

● 連載第二回

「ミチコ」・・・その名前に秘められた謎を追って、メイ探偵はこの二年間というもの、それこそ日本中を駆け巡ってきた。
捜査は遅々として進まないこともあった。 腹ペコになりながら奥方の説教にうなだれたこともあった・・・。

しかしゴールはもう近い・・探偵はそう自分を励ました。
もちろん、なんの根拠も無いことではあったが・・。

さて、捜査は大詰め。残すは「ミ」の一字である。
探偵の膨大な捜査資料によれば、「チ」があれほど多かったのに、「ミ」と読む文字はそう多くはない。むしろ拍子抜けするほどであった。
しかしこれが思いのほか難物であった。

美は違うと言う。かと言って、見・身・御は名前にはそぐわない。
いくら「名前に使われてるのを見たことが無い」にしても、後の二文字と合わせた場合「見知子」「御知子」などはピンと来ないのである。
かと言って、魅・箕・彌は小学校では習いそうもない。実・深・三ではありふれている。
「未知子」というのはまさしく謎の女風だが、いくらなんでも、と対象から外した。

もしミチコさんのご両親が『食いしん坊万歳』みたいな人であれば、「味知子」はあったかもしれない。
だが、探偵の捜査はご両親の食習慣にまでは及んでいなかった。

(あと「ミ」の字と言えば・・・と・・・)

探偵は考え続けた。そしてふと十二支の六番目が「巳」であることに思い至ったのであった。

「巳」・・・これは文字どおりヘビが象形文字となったものである。

探偵はペンを取ると、なにやら書き始めた。

「えーと・・えーと・・・」

どうやら巳年が西暦の何年になるか、リストアップしているようである。「えーと」というのは、どうやら「エト」と掛けているらしい。

「うむ。これだっ!」

しばらくして、探偵は大声を上げた。

「1965年・昭和40年、巳年! これだ! これに違いない」

探偵は巳の字が、ミコさんの生年から採ったものであると考えたのであった。
ミコさんがこの年の生まれであるとすると、現在35歳。
その前の巳年となると現在23歳ということになって、これは若すぎる。(註:2000年当時。以下同様)

実はミコさんの年齢について、探偵はこう考えていたのである・・・

(Excelをバリバリ仕事に使ってるみたいだから、もう入社数年目なんだろうな)
(ということは・・・25から28くらいかな?)
(それとも・・・う〜ん・・・31,2・・或いは33,4かも・・)
(だけどまだ初々しい甘えたところもあるから、もしかしたら18,9なんて・・・)
(いやいや・・ブルブルブル・・だまされちゃいかん。あれはハマチだな)
ハマチはブリが小さいときの名前。つまり『ぶりっ子』だーい。
というわけで、35歳というのは彼の考えていた上限値をも上回るものであったのだが、そこはもう自分の思い付きに酔ってしまって気にする気配すらない。
それでいて若い方の23歳とは思わないのだから、ひどいヤツがあったものである。
探偵はこの結論を持って、彼が尊敬してやまない筆者のもとに勇んで駆け付けたのであった。

(「ミ○コの謎」・・つづく − 次は早くも最終回です)

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